ア.強制手段とは,有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであって,この程度に至らない有形力の行使は,任意捜査においても許容される場合がある。
イ.荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,その荷物に外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察した行為は,任意処分として許される。
ウ.捜索に至らない程度の行為は,強制にわたらない限り,所持品検査においても許容される場合があると解すべきであるが,状況のいかんを問わず常に許容されるものと解すべきではなく,かかる行為は,所持品検査の必要性,緊急性,これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況の下で相当と認められる限度でのみ許容される。
エ.警察官が,交通取締りの一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において,交通違反の予防,検挙のための自動車検問を実施し,同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて,運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは,それが相手方の任意の協力を求める形で行われ,自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法,態様で行われる限り,適法である。
オ.酒気帯び運転の疑いが生じたため,酒気を検知する旨告げたところ,運転者が急に反抗的態度を示し,エンジンのかかっている自動車の運転席に乗り込んで発進させようとしたので,警察官が運転席の窓から手を差し入れエンジンキーを回転してスイッチを切った場合,この行為が適法とされることはない。